もじゃハウス®プロダクツ奮闘日記

植物でとにかくもじゃもじゃ『もじゃハウス®』を提案する、京都の建築士事務所もじゃハウスプロダクツのひがたです。

商人の心得

気が付けばお盆目前の盛夏です。今年はイベント続きで慌ただしく、季節を感じる暇なく春と初夏を終えてしまったので、もう残暑になるのか!とびっくりな今日この頃。

最近はテレビでも夏の風物詩、怖い話特番が放送されていますね。実は私、怖い話が割と好きで、子供のころの夏休みは「あなたの知らない世界」を毎日欠かさず見ていました。

そして、この週末にたまたまテレビをつけたら怖い話特番をやっていまして、初老のタクシー運転手さんご本人が登場し、ここで乗せて、ここで降ろした、など、実際の場所を巡りながら、数年前に経験して忘れられない乗客の話が始まりました。

その内容は、

ある夜、随分と覇気のない若い女性を乗せ、ぽつりぽつりと会話をしながら1時間、目的地の交差点へ向かう。到着すると女性は「ここで待っていて下さい」と言って車を降り、交差点の角を曲がり、数分後に戻って来た。

再びタクシーへ乗車した女性の様子が気になり「どうかしましたか?」と声をかけると、覇気のない声で「私が、ここで死んだ、という事が、分かりました」と呟き、乗車場所へ折り返すよう頼まれた。

運転手は女性の言葉に驚き、あの世の者か、この世の者かも分からない乗客を再び1時間かけて元の場所まで送り届けたという恐怖を語っていました。

が、

私が驚いたのはここから。

なんと、到着すると運転手は運賃9000円弱の支払いを求め、女性は「必ず払います」と、運転手が差し出した紙に自分の名前、住所を書き、この住所にいる母が払いますと言い残し、運転手もその時はそれで女性を降ろしたが、後日その住所を尋ねるとそこはお寺であって、未だその女性が誰なのか、いったい書き残した住所にはどんな意味があったのかは分からず、どういう事だったのだろうかと恐怖と不思議が入り混じる体験を語る運転手。

 

って、

ちょっと待って、

私には、あの世の者かも知れない乗客に9000円を請求できる運転手のハートの強さがこの世の者と思えないんですけど。しかも、手持ちがないと精算を渋るあの世の者(仮)に運賃のレシートを渡し、裏に名前と住所を書かせるそのストロングさがやっべえぞ。

私だったらですね、未だに忘れられないレベルの恐怖であったならば、9000円程度はもう請求しません。金とかどうでもいいんで一刻も早く降りて欲しいと願い、降ろした瞬間にアクセルべた踏み、頭文字Dなみのドリフト走行で恐怖に震えつつ、一目散に立ち去る事だけを考えるのが精いっぱいなはずですし、そもそもあの世の者がお金持ってるなんて考えたこともなかった。もうこれは己の常識を疑えレベルで目から鱗。しかも、強く出たらあの世の者でも一応お金払うそぶりを見せるんかい!!というトリビアに10へぇ。後半のくだりのおかげで知らない世界への恐怖が吹っ飛び、いつも請求に弱腰の自分は寧ろ、現世で生きる人間の底力(つうか、生活力)に脱帽しました。

でも、スタジオのゲストたちは、そこには特に注目しなかったみたいで、このVTRの後に「いったい女性は何を伝えたかったんでしょうか」「怖いですね」と口々に言ってましたが、私にはあの世の者にもきっちり請求を怠らない商人の鏡のおかげで、渾身の力でこの世に出てきたかも知れない問題の女性の存在は霞み、己の弱気な商売を省みた夏の日でありました。

「おばけにも 怯まず出そう 請求書、歌丸です」